新短歌
七絶・送春迎夏
七絶・紫陽花 二首
七絶・客房裡不可以,涼台上可以吸烟。獨耐高所恐怖症点烟
七絶・緑陰讀書
五排・初夏山行
伏暑四首
賞龍舌蘭花發 三首
七絶・蝉 二首
一七令・蝉 二首
紅綉鞋・殘 蝉
声声慢・聽 秋
偲歌・夜聽蝉
漢俳・富嶽霽景

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     七絶・送春迎夏          2003. 4.24

  紅白橙黄青紫藍,   紅白橙黄青紫藍,
  百花繚乱映澄潭。   百花繚乱 澄潭に映ず。
  老殘貪梦游仙境,   老残 夢を貪って仙境に遊べば,
  午睡緑陰風轉南。   午睡の緑陰に風うたた南す。

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     七絶・紫陽花 其一        2002. 6.23

  滿目緑肥苔蘚侵,   目を満たして緑肥え苔蘚侵し,
  庭前聽雨對繁陰。   庭前に雨を聴いて繁陰に対す。
  老殘猶病功名事,   老殘なお病む 功名の事,
  集驟鮮花説素心。   集驟鮮花に素心を説く。


     七絶・紫陽花 其二        2002. 6.23

  紫陽花露誰人涙?    紫陽花の露はだれの涙?
  白玉盤光雨后天。   白玉盤の光 雨後の天。
  疑是廣寒宮女嘆,   疑うはこれ広寒の宮女の嘆き,
  無端昨夜落銀鈿。   端なくも昨夜 銀鈿を落とせりと。

    白玉盤:月のこと。廣寒宮:月の宮殿。嫦娥が住む。
    落銀鈿:銀の簪を落とす。

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七絶・客房裡不可以,涼台上可以吸烟。獨耐高所恐怖症点烟。  2004. 8. 8

  三十層上有涼台,   三十階に涼台(ベランダ)があり,
  可以人吸眺望開。   タバコが吸えて眺望、開けたり。
  獨耐頭暈点烟處,   ひとり頭暈(めまい)に耐えて火を点ければ,
  乗風鴿子銹欄来。   風に乗って鴿子(鳩)、錆びた欄干に来る。

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     七絶・緑陰讀書          2002. 7.30

  蝉声如雨緑陰稠,   蝉声 雨のごとく緑陰稠(おお)く,
  避暑讀書閑可偸。   暑を避けるの読書 閑 偸むべし。
  風韵生生吹百世,   風韵 生生として百世に吹き,
  元人名曲爽心頭。   元人の名曲 心頭に爽やかなり。

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     五排・初夏山行          2004. 4.29

  青春歸昨梦,    青春 昨夢に帰し,
  朱夏擧新烽。    朱夏 新烽(シンホウ)を挙ぐ。
  花散嶺雲涌,    花散って山雲涌き,
  緑肥風氣濃。    緑肥えて風氣濃かなり。
  樹林繁鬱鬱,    樹林は繁って鬱鬱とし,
  谿澗瀉淙淙。    谿澗は瀉いで淙淙たり。
  飛瀑濛濛雨,    飛瀑 濛濛たる雨,
  閑情落落胸。    閑情 落落たる胸。
  笑裁詩一首,    笑って裁す 詩一首,
  欲飲酒千鍾。    飲まんと欲す 酒千鍾(センショウ)。
  反性烟霞癖,    性に反らん 烟霞の癖,
  佯仙文士宗。    仙と佯らん 文士の宗(シュウ)。
  無言白頭歩,    言無き白頭の歩み,
  悦目翠峰重。    目を悦ばす 翠峰の重なり。
  回首仰山頂,    首を回らして山頂を仰ぎ,
  登高倚老松。    高きに登って老松による。
  日輪輝燦燦,    日輪は輝いて燦燦と,
  華髪薄鬆鬆。    華髪は薄く鬆鬆たり。
  愚叟疲勞早,    愚叟 疲勞すること早く,
  幽禽啼斷慵。    幽禽 啼断して慵し。
  游魂迷反路,    魂を遊ばして反路に迷い,
  探勝忘中庸。    探勝 中庸を忘る。


   新烽:新しい烽(のろし)の意。
   反性:本性にかえる。
   烟霞癖:極端に自然を愛し、探勝すること。 
   文士宗:文士が主とする教えの意。「宗」は「宗教」の「宗」。
   華髪:しらが。
   反路:帰り道。

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         伏暑四首          2004. 6.25


        五 絶

  垂綸人半梦,     綸を垂れて人は半ば夢み,
  流汗對南江。     汗を流して南江に対す。
  驕日烹行水,     驕日 行水を烹れば,
  魚鱗浮釣矼。     魚鱗 釣矼に浮く。

   垂綸:釣りをする。
   驕日:盛んに照る太陽。
   行水:流れ行く水。
   魚鱗:魚。
   釣矼:釣りをするための飛び石


        七 絶

  白首枕書眠北窗,  白首 書を枕して北窓に眠り,
  涼陰梦雪臥肥尨。  涼陰に雪を夢みて肥えたる尨(ボウ)臥す。
  午鷄將痩無鳴處,  午鷄まさに痩せんとして鳴く無きところ,
  只有驕陽過鏡江。  ただ有り 驕陽 鏡江を過ぐ。

    肥尨:太ったむく犬。


        五 律

  門前絶車馬,    門前に車馬 絶え,
  樹蔭見眠尨。    樹蔭に眠る尨 見ゆ。
  午日臨南嶺,    午日 南嶺に臨み,
  霜頭梦北窗。    霜頭 北窓に夢みる。
  納涼乗小艇,    涼を納めて 小艇に乗り,
  傾盞下清江。    盞を傾けて清江を下る。
  笑對仙娥醉,    笑って仙娥の酔うに対せば,
  睡魔瞠目降。    睡魔 瞠目して降る。

     仙娥:美人。
     睡魔降:眠気が醒める。
     瞠目:眼を見張る。


        七 律

  草舎納涼依北窗,  草舎の納涼 北窓に依り,
  曲肱堪枕梦何邦?   肱(ひじ)の枕するに堪ゆるを曲げて夢みるは何の邦ぞ?
  浮舟流水對仙女,  舟を浮かべて流水に仙女に対し,
  含笑殊郷共酒缸。  笑みを含んで殊郷(シュキョウ)に酒缸(シュコウ)を共にす。
  醉眼朦朧坐星夜,  醉眼朦朧として星夜に坐れば,
  月輪圓轉過天江。  月輪円転して天江を過ぐ。
  游魂易醒風蒸鬱,  游魂 醒め易し 風は蒸鬱,
  繁蔭可憐無吠尨。  繁蔭 憐むべし 吠ゆるなき尨。

     仙女:美人。
     殊郷:異郷。
     酒缸:酒をいれるかめ。
     繁蔭:よく茂った木陰。
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      賞龍舌蘭花發 三首


       七 絶            2003. 8. 2

  蜂飛蝶舞夏將闌,    蜂飛び蝶舞って 夏 まさに闌(たけなわ)ならんとし,
  老嫗伴翁芳苑攅。    老嫗 翁を伴って芳苑に攅(あつ)まる。
  知命花心怒金髪,    知命の花心 金髪を怒らせ,
  驕陽直下聳青竿
    驕陽直下 青竿 聳ゆ。

   知命:50歳のこと。ここでは天命を知ることをかけている。
   金髪:リュウゼツランの花は黄色。花は小さいが多く、金髪を束ねたように見える。
   青竿:リュウゼツランの茎は節のない青竹のようにまっすぐ伸びる。


        七 絶           2003. 8.13

  嫗仰翁瞻黄髪花,   嫗は仰ぎ翁は瞻る 黄髪の花,
  衝天百尺鳳姿誇。   天を衝きて百尺 鳳姿誇る。
  芳心知命盈香氣,   芳心 知命にして香気盈(み)ち,
  蝶醉蜂狂蝉乱譁。   蝶は酔い蜂は狂い蝉は乱譁たり。


        漢 歌           2003. 8. 3

  健嫗伴翁游。      健嫗 翁を伴って游ぶ。
  仰看長竿衝碧落,   仰ぎ看る長竿 碧落を衝き,
  淫志抗黄頭。      淫志 黄頭を抗す。
  知命花心發天性,   知命の花心 天性を発し,
  回春晩節思悠悠。   回春の晩節 思い悠悠。

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     七絶・蝉 其一          2002. 8.11

  冥冥悶悶亦綿綿,   冥冥たり悶悶たり また綿綿たり
  養命地中眠幾年?   命を養い地中に眠ること幾年ぞ。
  蝉蛻清晨醒晩節,   蝉蛻(センゼイ)して清晨に醒めれば晩節,
  鳴呼伴侶已秋天。   伴侶を鳴いて呼べば すでに秋天。
                         (普通話韻十四寒)

    冥冥悶悶亦綿綿:現代語で読めば大体「ミーンミーンメンメンイミェーンミェーン」。つまりミンミンゼミの鳴き声を音写している。 
    蝉蛻:蝉が殻を脱ぐこと。

     七絶・蝉 其二            2002. 8.11

  歐心促促叫君名,  心を謳(うた)って促促と君が名を叫(よ)び,
  勉勉綿綿訴戀情。  勉勉として綿綿と戀情を訴える。
  養命地中長歳月,  地中に命を養うこと、長き歳月,
  吟腸老愈樂浮生。  吟腸老いていよいよ浮生を楽しむ。
                          (普通話韻十七庚)

    歐心促促:現代語で読めば大体「オウシンツーツ」。ツクツクボウシの鳴き声を音写している。「促促」は気ぜわしいさま。あるいは「いそいそ」の意。
    勉勉綿綿:現代語で読めば大体「ミィェンミィェンミェーンミェーン」。ミンミンゼミの鳴き声を音写している。「勉勉」は勤め励むさま。

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     一七令・蝉 二首         2002. 9. 9

                蝉,                       声。
              戀戀,綿綿,                 求友,蝉鳴。
            吟樹頂,老秋天。              涼意動,暮烟横。
           清晨吸露,炎晝承歡,             青山如畫,紅霞有情。
         放歌求伴侶,鳴尽落誰邊?        散人頻曳杖,幽境慰浮生。
        幽隱猶思花貌,霜頭難斷塵縁。      四十年來宮仕,三千里地天晴。
           輕風拂面 雲晩景閑。           老境誰誇 巓月澄澄。
                新 破                      功 峰
                涼 嶽                      一 看
                爽,富                      片,只

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     紅綉鞋・殘 蝉          2000. 8.13

  朝飲露炎天放唱,夕迎風清夜佯狂,殘蝉鳴處月痕蒼。高天響,斷人腸,曳愁哀吟悵悵。

  朝に露を飲んで炎天に放唱し,夕べに風を迎えて清夜に狂いの振りをし,残蝉鳴くところ月痕蒼(あお)し。高天に響き,人腸を断ち,愁いを曳いて哀吟悵悵たり。


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     声声慢・聽 秋          2002. 9.28

  綿綿勉勉,濟濟聯聯,声声促促戀戀。正是殘蝉哀訴,好逑逃散? 先鳴合先落,仰秋陰、被蒙雨洗。風颯起,拂層雲,富嶽聳然天半。  熏夕閑情易亂,思余命、當鼓詠懷猶健。随歩穿林,搖吻裁詩漫漫。詩境擬唐陳腐,轉嘆嗟、吾才淺短。聽歸路,早蛩吟、紫穹飛雁。

  綿綿たり勉勉たり,濟濟たり聯聯たり,声声 促促たり恋恋たり。まさにこれ 残蝉の哀訴したるか,好逑の逃散したるを? 先に鳴くはまさに先に落ちるべく,秋陰を仰ぎ、雨に洗われたり。風 颯として起ち,層雲を払い,富嶽 天半に聳然たり。
  熏夕の閑情乱れやすく,余命を思えば、まさに詠懷のなお健なるを鼓すべし。歩に随い林を穿ち,搖吻(くち)を揺らして詩を裁し漫漫たり。詩境は唐に擬して陳腐なれば,轉(うた)た嘆嗟す、わが才の浅短。帰路に聴く,早蛩の吟、紫穹に飛雁あり。


声声慢・聽秋をめぐって

 まず拙作の語釈を少々。
 綿綿勉勉:連綿と勉め励むさま。ここではまた、ミンミンゼミの声を音写。 濟濟:数多くそろって立派なさま。ここではまた、アブラゼミの声を音写。 好逑: 好い配偶者。蝉は畢竟、メスを求めて鳴く。 衰邁: 歳を取り衰えること。

 9月末、わが家の周辺では最後の蝉(ツクツクホーシでした)を聞きながら書いた詞です。詩材は8月末に遊んだ富士山麓で眼にした光景です。昨年は夏に蝉の声を音写した絶句を書き、この詞を書きました。
 「声声慢」は、李清照に名作(下記)があり、蘇軾の「水調歌頭」、岳飛の「満江紅」などと並び称される宋詞の絶品とされています。
 そこで、とても書きにくいのですが、50点ぐらい取れればとの思いで挑戦してみました。
 以下、「声声慢」をめぐって少々。

 まず、李清照の「声声慢」は次のとおりです。
  尋尋覓覓,冷冷清清,凄凄惨惨戚戚。乍暖還寒時候,最難將息。三杯兩盞淡酒,怎敵他、晩来風急。雁過也,正傷心,却是旧時相識。
  満地黄花堆積,憔悴損、如今有誰堪摘。守着窗児,独自怎生得K。梧桐更兼細雨,到黄昏、点点滴滴。這次第,怎一個、愁字了得。

 「声声慢」の詞譜(仄声押韻)は次のとおりです。

      声声慢・97字
  ○○▲(★),▲●○○,△○▲▲●★。▲●△○▲●,△○○★。△○●△●,●△○、△○●★,△▲●,●△○,▲●△○▲★。
  ▲●△○▲(★),△△●、○△●○○★,▲●○○,▲●△○△★。○△●○●●,●○△、△△●★。▲▲●,●▲▲、△▲▲★。
 ○は平声,●は仄声。△は応平可仄,▲応仄可平。★は仄声押韻,(★)は押韻せずとも可。

 「声声慢」はもともと「勝勝慢」と呼ばれていたものです。それを蒋捷という宋末元初(13世紀〜)の詞人が、押韻箇所のすべてを「声」一字で書きました。以後、「声声慢」と呼ばれるようになりました。
 李清照が生きた時代(12世紀)はそこで、「勝勝慢」と呼ばれていたことになります。
 蒋捷の詞は、押韻箇所のすべてを「声」一字で押韻したことのほかに一考に値します。なぜなら、李清照は、上記仄声の詞譜に従った書き方をし、韻字は入声を用いていますが、「声」は平声、つまり、同じ「「声声慢」でも、李清照のように仄声で押韻する場合と、蒋捷のように平声押韻の場合があることになるからです。そして、1200年生まれの呉文英も「平声」で書いています。
 ここまで調べて気になったことがありました。李清照の詞は仄声ではあるが「入声」だということです。 唐詩では平と仄の対照が、宋詞では平・上・入声と去声の対象へと変化していく流れがあるということを聞き及んでいました。そこで、 李清照の詞の押韻字の四声を調べてみますと、驚くべきことに、現代韻で読めば、1カ所を除いて、すべて現代韻では平声とされている語で押韻されていることがわかりました。そして、その1カ所も、詞譜に照らせば必ずしも押韻する必要のないところであり、律句の規則(二四不同・二六同)に照らせば、仄声で書かれるべきところでした。

李清照の押韻字:カッコ内は現代韻での四声
  覓(4),戚(1)。息(1)。急(2)。識(2)。積(1),摘(1,2)。K(1)。滴(1)。得(2)。

 拙作はしかし、純粋な仄声で書いています。もしかすると間違ったかも知れないと思いつつも、詞譜に沿ってそうしました。そして、今ではもう小生の持論のようなものとなっていますが、改めて思ったのは、「クフツキ」がわかる分だけ日本人の詩は中国人よりも失声が少なく整っていると誇るのは間違いだということ。「クフツキ」は擬唐詩の便法とはなりえても、詩と音韻のホントウのところは見えず、井の中の蛙の片思いのごときものであるということ。そこで、われわれ日本人がどうすればよいかというと、まず誇るのをやめよう、ということでした。

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     偲歌・夜聽蝉           2003. 8.13

  鳴鳴戀戀,促促綿綿,輾轉無眠,夜聽蝉。

   鳴いて鳴いて戀戀たり,促促たり綿綿たり,寝返りうって無眠りなく,夜に蝉を聴く。

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     漢俳・富嶽霽景       2003.10.13

  行雲霽景初。    行雲 霽景の初め
  富嶽衝天蝉語蘇,  富嶽 天を衝き、蝉語蘇り,
  落日五湖浮。    落日 五湖に浮く。 (普通話韵十姑)


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