七絶・庚申偶作 2002.10.21 髑髏頭頂芳花發, 髑髏の頭頂に芳しき花 発(ひら)き, 仙女胯間飛蝶迷。 仙女の胯間に飛蝶 迷う。 醉月老殘貪梦處, 月に酔って老残 夢を貪るところ 三尸驚訝出臍躋。 三尸 驚訝して臍を出でて躋る。 (上平声「八斉」の押韻) (注) 三尸:道家で人の腹中にすむという三匹の虫。庚申の日に腹中から 出てきて、その人の秘密を天帝に告げるという。 驚訝:あきれる。 この詩はわたしなりの死生観(とはいえ大方は俗な道教かぶれ)をイメージで書いたものです。したがって、どう読んでいただいても構わないシロモノで、作者自身がそのねらいを書くのもいかがなものかと思われますが、わたしとしては、エロスとタナトスを食材にブラックユーモアのソースで煮込んだつもりです。お手本は寒山、李白、李賀のあたりでしょうか。 起句:冬の死から春が再生することを象徴しています。また、生命の誕生を象徴しています。 承句:夏、あるいは、生命の歓喜を象徴しています。 転句:秋、あるいは、老いを象徴しています。 結句:人生を総括しています。三尸は何を天帝に報告するのでしょうか。 人は罪深い存在です。したがって、三尸はその、本人が人には言えず抱え込んでいる秘密、つまりは「罪」を報告するのではないでしょうか。 しかし、起句・承句のような放埓な夢を貪る者をどう天帝に報告するのか。三尸が呆れ返ってしまうとき、人は死に、死ぬことによって生死を超越するのではないでしょうか。とすると、人の運命を見張る三尸とは、そのひとの魂ではないのか。 わたしは、拙作の結句で「三尸が天に昇る」ということは、魂の昇天を象徴すると解釈しています。 つまり、起承はエロス、転結はタナトスという構成になっています。エロスは、わかりやすく言えば男女です。そこで、起承は対句にしています。タナトスは崩壊です。そこで、ここは対句にしていません。 <戻る> |
七絶・人有一死 2000. 2.12 人有彭殤是峻科, 人に彭殤あるはこれ峻科, 必須一死死方多。 一たび死するは必須なるも死に方は多し。 孩笑三天厭光澤。 孩 三天笑って光沢を厭い, 朝辞塵境若投梭。 朝に塵境を辞して投梭のごとし。 孩:嬰児。 三天:三日。 投梭:女がひじ鉄砲を食わせること(故事)。また、目にもとまらぬ速さのたとえ。 <戻る> |
七絶・恒河朝晩東流 2003. 6.25 亡骸化焔歸灰燼, 亡骸 焔と化して灰燼に帰し, 新鬼昇天敲佛門。 新鬼 天に昇って仏門を敲(たた)く。 朝晩恒河流瀲瀲, 朝に晩に 恒河 流れて瀲瀲(レンレン), 篝灯点点送行雲。 篝灯点点と行雲を送る。 (普通話韵十五痕) 恒河:ガンジス河。新鬼:死んだばかりの亡霊。 篝灯:かがり火。ここでは死者を焼く炎。 <戻る> |
七絶・余生十萬時間 2003. 7.10 解綬仰天雲影閑, 綬を解いて天を仰げば雲影閑にして, 余生十萬百時間。 余生は十万百時間。 浮舟蒼海投竿處, 舟を浮べ蒼海に竿を投げるところ, 偸餌銀鱗水底還。 餌を偸んで銀鱗 水底に還らん。 (普通話韵十四寒) 解綬:解綬を解く。退職すること。 銀鱗:銀色の鱗。魚。 定年・再就職を迎え、どのくらい時間があるのか、計算した。何歳まで生きるかが問題だが、もうしばらくは働くとしても、かなりの時間が残されている。小生が試算した10万時間は、これまで会社で働いていたのと同じくらいの時間です。 ところで、その時間を何に使うか。小生は詩を書きますが、みなさんはどうされますか? なお、拙作、要するに軽い詩ですが、竿を投げるのが小生で人生が銀鱗であるのか、それとも小生が銀鱗で、竿を投げるものが人生であるのか、その答えは人生の最後まで見出せないかも知れません。 <戻る> |
七絶・人踏影 2004. 1.15 誰思平晝日將沈, 誰か思わん 平昼に日は將に沈まんとし、 片影随形歩歩伸。 片影随形に随いて歩歩に伸びるを。 夕暮何増情寂寞? 夕暮 なんぞ増さん 情の寂寞たるを? 白頭獨對黝K人。 白頭 ひとり対す黝黒の人。 (普通話韵十五痕) 平昼:真昼。正午。 黝K人:黝黒は真っ黒。ここでは自分の影。この詩は、人生を一日にたとえ、せまりくる「老い」を、正午を過ぎれば伸びてゆく自らの影に託している。 <戻る> |
七絶・佳人死盛春 2004. 3.22 肺臓藏花開病身, 肺臓 花の病身に開くを蔵し, 阿嬌薄命死酣春。 阿嬌 薄命にして酣春に死す。 櫻雲吐雪天飛處, 櫻雲 雪を吐いて天に飛ぶところ, 憔悴斷腸埋骨人。 憔悴断腸す 埋骨の人。 (普通話韵十五痕) <戻る> |
七絶・送故人 2004. 2.25 長生必老髪鬆鬆, 長生きすれば必ず老いて髪は鬆鬆, 頻送故人墳地東。 頻に故人を送る 墳地の東。 血涙乾涸懷旧淡, 血涙乾涸して旧を懐うに淡にして, 無言戀慕落暉紅。 言なく恋慕す 落暉の紅きに。 髪鬆鬆:頭髪がまばらなさま。 (普通話韵十七東) <戻る> |
七絶・暮春多人死 2004. 3.22 髑髏頭頂生芳草, 髑髏の頭頂に芳草生じ, 墓地櫻雲流暮春。 墓地の櫻雲 暮春に流れる。 偶見月鈎垂碧落, たまたま月鈎の碧落に垂れるを見れば, 又疑今夜釣誰人? また疑う 今夜は誰を釣らんかと <戻る> |
七絶・願化爲化石得名声 2003. 6.12 迂儒大梦願留名, 迂儒大夢に名を留(とど)めんと願い, 仙洞坐禪心自平。 仙洞に坐禅すれば心おのずから平らかなり。 獨耐風霜成化石, 獨り風霜に耐えて化石となり, 承蒙發掘得芳声? 発掘されなば芳声を得んか? 芳声:よい評判 <戻る> |
倩女幽魂(死に神)四首 七絶・清明掃墓 2004. 3.23 倩女幽魂撫頭頂, 倩女幽魂(セイジョユウコン) 頭頂を撫でれば、 醉翁陰鬼吐春霞。 醉翁の陰鬼 春霞を吐く。 櫻雲盛涌風輕處, 櫻雲盛んに涌いて 風 軽きところ、 墓地清明飛雪花。 墓地は清明にして雪花を飛ばす。 (普通話韵一麻 下平声六麻) 清明:陽暦四月五日の頃。春分と穀雨の間。中国では、墓参りの時候。 掃墓:墓参り。倩女幽魂:美しい女性の死神。陰鬼:死んだ人の靈魂。 七絶・人死天游 2004. 3. 6 倩女幽魂撫老頭, 倩女幽魂 老いたる頭を撫でれば, 一眠無醒死清秋。 ひとたび眠って醒めるなく清秋に死す。 天仙笑賣羽衣處, 天仙笑って羽衣を売るところ, 人付紙錢霄漢游。 人 紙錢を支払って霄漢に遊ぶ。 七絶・犬死天游 2004. 3. 6 夜聽警犬叫声愁, 夜に聴く、番犬の吠えて愁い, 倩女幽魂撫老頭。 倩女幽魂 老頭を撫でるを。 春曉梦深無醒處, 春暁 夢深く醒めるなきところ, 雲如走狗曙暉流。 雲は走狗のごとく曙暉に流れる。 漢俳・老犬垂死 2004. 3. 5 警犬叫声愁, 番犬 吠えて愁えば, 倩女幽魂撫老頭。 倩女幽魂 老いたる頭を撫でる。 春夜月如鈎。 春夜 月は釣り針のごとし。 <戻る> |
七絶・想宮本武蔵度冥土 2003. 9.11 磨剣殺人爲剣豪, 剣を磨き人を殺して剣豪となり, 垂名眠墓戒名妖。 名を垂れて墓に眠れば戒名妖なり。 武門居士揮氷刃, 武門の居士 氷刃を揮うも, 不死亡靈蘇半宵。 不死の亡霊 半宵には蘇らん。 垂名:後世に名を残すこと。半宵:真夜中。 宮本武蔵:日本最有名的劍豪也。 <戻る> |
七絶・老來多病 2004. 6. 2 尼采梅毒我頭痛, ニーチェの梅毒 わが頭痛, 近年妻子訴腰痛。 近年 妻は腰痛を訴う。 隣家醉叟痛風疼, 隣家の醉叟に痛風疼き, 人老無牙無劇痛。 人老いれば歯なくして激痛なし。 <戻る> |
七絶・節葬好 2003. 9.22 厚葬久喪崇墓標, 厚葬久喪、墓標を崇(あが)め, 大名内室得巖喬。 大名の内室 岩の喬(たか)きを得たり。 可憐碑重圧纖骨, 憐むべし、碑重く纖(ほそ)き骨を圧し, 人悔往時誇柳腰。 人悔いなん、往時に柳腰を誇るを。 <戻る> |
七絶・人生如水 2000.11. 8 百年放尿尽千樽, 百年の放尿、千樽に尽き, 一夜臨終涙一痕。 一夜の臨終、涙一痕(いっこん)。 何處醉魂明旦醒? いずこぞ、酔魂、明旦に醒めん? 有否仙郷酒家喧? ありや否や、仙郷に酒家の喧しき? <戻る> |
七絶・少年去黄泉 2002. 8. 2 告別太陽飛碧天, 太陽に別れを告げて碧天を飛び, 投身溟海去黄泉。 溟海に身を投げて黄泉に去る。 少年誤讀菩拉遁, 少年、誤ってプラトンを読み, 未受艱難戀洞玄。 いまだ艱難を受けずして洞玄に恋す。 菩拉遁:PLATON:柏拉圖。 洞玄:仙人のいるところ。 <戻る> |
七絶・胆 石 2003.12.25 貝抱真珠人胆石, 貝は真珠を抱き人は胆石, 妖如猫目耿光奇。 猫目のごとくに妖しく耿光奇なり。 五年一個七十歳, 五年に一個、七十歳, 暗算金錢待賈期。 暗に金錢を算じて待賈の期(とき)。 (普通話韵七斉) <戻る> |
七絶・怕狂牛病屠猪 2001.12. 1 牛狂人餓屠肥猪, 牛狂えば人餓えて肥えたる猪を屠り, 目笑舌伸舐佳肴。 目は笑い舌は伸びて佳肴を舐める。 醉裡偶思天食物, 醉裡にたまたま思う、天の食物, 神仙夕釣裸虫炮。 神仙 夕べに裸虫を釣りて炮らん (普通話韵十三豪) 裸虫:人間 <戻る> |
七絶・垂死偶成 2003.10.10 偶養蒼癌臨死期, たまたま養蒼き癌を養い死期に臨めば, 中秋銀月照人凄。 中秋の銀月、人を照らして凄まじ。 還錢一冩情書后, 金を返しひとたび情書を書いてののちも 更有百忙建墓疲。 更にあり百忙、建墓を建てて疲れたり。 (普通話韵七斉) <戻る> |
七絶・幽魂飛 1998. 1.24 目下雁群共往飛, 眼下に雁の群 共に往きて飛び 山河縹渺日熹微。 山河は縹渺として日は熹微たり。 不知彼岸同春景, 知らず 彼岸は春景を同じくするかを, 一路無言欲適歸。 一路 言なく 適帰せんと欲す。 (平水韵上平声四微) <戻る> |
新譜・晩節四時吟 2003. 8.29 人生無二價,我賣半生眞半價。莫笑霜頭更廉價,晩節多閑暇。 酣春曳杖賞櫻酣,午睡緑陰消夏,貪梦情無假。 乱蛩環草舎,戀慕嫦娥輝艷冶。秋想吾鰥君也寡,飲涙風声嗄。天帝未呼無上天,呵筆凌寒冬夜,浮幻吟花下。 人生 価(あたい)を二にするなくも,我は 半生を真に半価で売れり。笑うなかれ 霜頭は更に廉価にして、晩節に閑暇多きを。酣春 杖を曳いて櫻の酣(たけなわ)なるを賞(め)で,午睡して緑陰に夏を消し,夢を貪りて情に仮(かり)なし。 乱蛩 草舎を環(めぐ)り,恋慕す 嫦娥(こうが)の輝いて艷冶なるを。秋に 吾れは鰥(やもを)にして君また寡なりと想い涙を飲めば 風声 嗄れる。天帝いまだ呼ばざれば天に上るなく,筆を呵して寒を凌ぐ冬夜,幻を浮かべて 花下に吟ず。 無二價:掛け値なし。 半價:半値。 消夏:暑さを凌ぐ。 無假:いつわりなし、嘘がない。 鰥・寡:鰥(カン)は年をとって妻のない男。寡(カ)は夫に死なれた女。 呵筆:凍った筆に息を吹きかけてとかすこと。寒中に詩文を書くこと。 <戻る> |
柳含烟・夏天掃墓 2000. 8. 7 鳴蝉噪,喜驕陽。老叟何堪午熱,炎風拂面汗成行,意茫茫。 口渇促涎如喋血,人自無言巻舌。夏天掃墓有何能? 路登登。 鳴蝉噪ぎ,驕陽を喜ぶ。老叟何んぞ午熱に堪えん,炎風、面を払い、汗、行をなし,意(こころ)茫茫たり。 口の渇(かわ)き 涎を促して血を喋(な)めるのごとく,人 おのずから言なく舌を巻く。夏天の掃墓 何んの能ありや? 路(みち)は登り登る。 |
十六字令・魚 1999. 1.26 魚, 魚、 見釣高飛看月初。 釣られて高く飛び月を見るの初め。 寒濤海, 寒濤の海、 凛凛素影虚。 凛凛として素影虚し。 <戻る> |
漢歌・人生人笑 2002.12.24 人生まれて人笑う 露出亀頭小, 亀頭の小さきを露出して, 初看塵寰満光耀, 初めて見る、塵寰の光耀に満ち, 眼前花貌笑。 眼前に花貌の笑うを。 是母親欣然介紹, これ母にして欣然と紹介す, 我的父親風態好。 わが父親の風態の好(よ)きを。 <戻る> |
漢俳・墓地花開 2004. 1.28 東風拂面吹。 東の風 顔を撫でて吹く。 墓地櫻花生死灰, 墓地の桜は死灰より生じ、 童子喜春回。 童子は春の回るを喜ぶ。 <戻る> |
漢俳・紀功碑 2003.12. 4 兵士死無歸。 兵士死して帰るなし。 故土遺族埋骨涙, 故郷の遺族 埋骨して涙すれば, 雨洗紀功碑。 雨は洗う 功を記す碑(いしぶみ)。 <戻る> |
漢俳・愁聽天籟 2003. 4.29 莫笑醉顔丹。 笑うなかれ 酔顔の赤きを。 散官空過黄塵老, 散官 空しく過ごして黄塵に老い, 愁聽K風殘。 愁い聽く 黒風の殘(そこな)うを。 <戻る> |
漢俳・空老無功譽 2003. 8.18 精勤無寸暇。 精勤して寸暇なし。 悔我賣半生廉價, 半生を廉価に売りたるを悔い, 嘆櫻花易謝。 桜の散りやすきを嘆く。 <戻る> |
漢俳・有老殘 2003. 8.18 人生無二價, 人生に二価無くも, 天用吾才商半價。 天は吾が才を用いて半価に商う。 已老無光價。 すでに老いるも光価なし。 <戻る> |
漢俳・秋 醉 2003. 9.17 白首歩金秋。 白首 金秋に歩む。 賤賣人生牽老醜, 人生を安く売って老醜を牽き, 笑買酒消憂。 笑って酒を買い憂いを消す。 <戻る> |
漢俳・解綬偶成 2003.10.11 人生如禿毫。 人生はすり減った筆のごとし。 蒙塵勞碌官途老, 塵をこうむり碌に労して官途に老い, 斑白頭髪薄。 斑白にして頭髪薄し。 <戻る> |